「お願い、お願い、お願いっ。野々宮さんが来てくれないと、オレ、乃愛ちゃんに断られちゃうよ~」
「いやいや、森くん、その前に。30回も告白を断られておいて、乃愛を泊まりで旅行に誘うとか、そんなの絶対無理だから」
「えー、そこをなんとか!」
「ならないよ」
夏帆は、両手を合わせて頼みこんでいる森くんの手をパシッと払った。
「30回目の告白だかなんだか知らないけど、そんなことを言われたら、乃愛だって断りにくいでしょ。さすがに攻めすぎ」
「しょーがないじゃん。どーしても好きなんだから。なりふりかまってられないんだよー」
「いやいや、どれだけ図々しいんだよ。森くん、メンタル強すぎ」
夏帆はやれやれといった様子で、首を横に数回振った。
「付き合ってられない。もうこの際、友達で我慢しときなよ。それなら、たまに放課後、カフェにでも……」
「やだねー、無理無理。オレ、友達でもいいとか、そんなウソつけないもーん。好きなら付き合いたいじゃん?そのためには、もっとオレのことを知ってもらいたいじゃん?というわけでー。乃愛ちゃん、軽井沢のこと考えといてね~。明日、返事を聞きにくるからさ~」
一方的ににそう言うと、森くんは両手をブンブン振って、あたし達に背中を向けて歩き出してしまった。
……どうしよう。
30回も告白してくれたご褒美とか言われると、断りにくいよ。

