「え? ご褒美?」
急にそんなことを言われて戸惑いながら、森くんを振り返る。
そっとあたしを離した森くんは、少しだけ鼻を触って言った。
「そうご褒美。今日は俺が乃愛ちゃんに告白した30回目の記念日だから。だから、ちょっとわがまま言わせて」
「えっ、30回目!? 森くん、あたしにそんなに告白してくれたの? ありがとう」
「どういたしまして。というわけで、乃愛ちゃん、夏休みにオレと一緒に軽井沢に行かない?」
「えっ!? 軽井沢?」
「そう。ウチの別荘に、みんなで泊まりでー。きっと、ものすごく楽しいよ♪」
「泊まりで……軽井沢?」
「そう、泊まりで軽井沢。だってこれは、ご褒美だからっ」
ひとさし指をさっと立て、森くんはニコッと明るく笑った。
「メンバーは、オレと清水と乃愛ちゃんと……」
森くんは、サッカー部同士で仲がいい、あたしと同じA組の清水くんの名前を言った。
それから夏帆をチラッと見て、口早に告げた。
「あとは野々宮さん」
「……は? なに言ってるの?」
「一緒に来てよ~」
「は? やだ、なんで。巻き込まないで」

