「乃愛ちゃんは、困った顔も、ほんとかわいいね~」
「……え?」
視線だけチラッとあげると、森くんがあたしの顔をのぞきこみながらクスッと笑っているのが見えた。
「そんな顔もすげーかわいいから、ずっと見ていたいけど。大丈夫、気にしないで、わかってるから! ほら、顔あげてっ」
「う……ん」
森くんの明るい声に、ゆっくりと顔をあげる。
それでも目を合わせにくくてモジモジしていると、あたしの顔をのぞきこんだ森くんは、ひまわりみたいな笑顔であたしに言った。
「好きなヤツがいるんでしょ? 知ってるよ。だてに何回も告ってないし」
「ん……」
「でも言いたかったから。ものすごく言いたかったから、オレ、乃愛ちゃんに好きって言った。ただ、それだけ」
「森くん……」
「だから断られるってわかってても、また言いたくなったら、オレ、何回でも乃愛ちゃんに告白をすると思う」
「……って、森くん。あんた、また乃愛を困らせてんの?」
突然、夏帆の声がしてびっくりした。
用事が終わって、職員室から戻ってきたみたい。
「さすがに告白のしすぎじゃない? それ、一昨日もカフェで聞いた」
左横を見ると、あきれたって顔をした夏帆が、腕組みをしながら立っていた。

