「乃愛の初めて、全部俺がもらうから」

 低くキレイな声が耳に響いた。

「……え?」

 そう言っている間に近づくのは、ため息がでちゃうくらいキレイな顔。

 二重の目は涼しくて、凛としているのにどこか甘い。

「王……河……?」

 目の前の男の子の名前を口にして、少しだけ首をかしげる。

 だって、王河の雰囲気が急に変わったんだもん。

 どうしたのかな?

 あたしは、王河がこの部屋に来てからのことを思い返した。




 あたしの名前は、櫻川乃愛。

 私立南ヶ丘高校の1年生で、今日7月15日が誕生日の16歳。

 今日は放課後、お友達がカフェでお誕生日のお祝いをしてくれたから、いつもよりちょっと遅い17時30分頃帰宅した。

 一戸建ての2階にある自分の部屋に入ってすぐエアコンをつけて、フローリングの床に敷いた白いラグの上でちょっと涼む。

 それからふわっとしたフリルがかわいくて夏らしい、お気に入りのルームウェアに着替えた。

 夕食まで時間があるし、ちょっとごろごろしようかなぁとベッドに腰掛けたとき、玄関のチャイムが鳴った。

 誰かなぁ?と思いながらもたいして気にせず、スマホでSNSを続けていると……。