「美月、いつまでも泣いてんじゃねぇよ」


両手で顔を隠すその手をカオルは振り払った。

美月の涙でぐしゃぐしゃな不細工なその顔を真っ直ぐに見る。


「切るか、修復するか選択しろよ」


いつまでも泣いているのは、お前らしくねぇだろ、美月。

お前だって遅かれ早かれ、綺月とはいつかこんな風に向き合う時が来るのだと思っていたんだろ?


「綺月のことは大事に思っている、今もそれは変わらない」

「だったら…!」

「修復できるなら元の関係に戻りたいと思う。
でも、それを綺月が望んでいないのなら私は綺月にはもう会わない」


元の関係に戻れるなら、みんなそうしたいと思う。

でもそれがどれだけ難しいことか俺は身を持って知っていた。

それでもここに存在しているのなら、生きているのなら、声はまだ届くし仲直りだってできるんだ。

それに奈都に綺月を助けて欲しいと託された。

綺月にとっては余計なお世話かもしれないけど、いずれゆっくりと美月と接触させればいいと思って、この溜まり場に連れてきた。

でもまさか、こんな早くに顔を合わせることになるとは思いもしなかった。

完全に誤算だったと、この状況に俺は頭を抱えた。