「よぉ、綺月」
学校帰り、私の目の前に現れた、その男は驚くほど陽気な顔をしていた。
しまった、今日も学校を休めばよかった……。
私は男の顔を見て真っ先に後悔する。
「ちょっと付き合えよ」
「は?ちょっと……!離してよ!」
男はそう言うと、私の腕を掴み、近くに停めてある大きくて黒い大層な車に無理やり乗せる。
「ちょっと!なんなの!?」
強引すぎる力にまだ本調子じゃない私は抗えず車に乗ってしまった。
そして男も後部座席に乗り込むと、運転席に座っている男に声を掛ける。
男の一言で車が動き出すと、私は男の肩を思いっきり叩く。
「待ってよ、どこ連れていく気!?」
問い詰めると、男は私の顔を見ながら確かに言う。
車内は香水と煙草の匂いがきつくて、鼻がもげそうだった。
「Againの溜まり場」
──は?
この男、今なんて?
「俺の名前は、佐倉カオル」
ここで、初めて私はその男の名を知る。
「お前に名前言うのは初めてだったな。
名前聞かねぇから言うの忘れてたわ」
面白そうにカオルはほくそ笑んだ。
それよりも、
「Againって、確か……」
「暴走族だ」
――暴走族。
確かにカオルはそう口にした。

