Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「乗らない」


即座にそう答え反抗する。

だが男は顔色一つ変えずに、私に近寄り腰に手を回すと自分の方へグイッと引き寄せた。

男の顔が突然自分の視界いっぱいに移り、あまりの至近距離に怒ることも忘れ、胸がドクンと高鳴る。

目のやり場に困りあからさまに目を逸らすと、男はまた面白そうにフッと笑みを零した。

完全にからかわれている…

そう分かった時に私は男の硬い胸板を力一杯押して距離を取る。


「本当にやめて」

「だったら乗れ」

「だから乗らないって」

「乗らないなら今度はキスするぞ」


キ、キス…!?

こいつ本当に頭いかれてんじゃないの!?

私はこの男のペースに乗せられていることに無性に腹を立て、男の足めがけて思いっきり踏みつけた。


「痛ってぇ!」


男は踏まれた足を触りながら痛みに悶絶しているすきに、急いでこの場から逃げ出す。

あの時一瞬でも、バイクに乗りたいだなんて思ってしまった自分を思い出し、鳥肌が立った。

私は走れるところまで走り、あの男から距離をできるだけとる。