Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「いずれ、また挨拶にくるんで」

「その時はもっとちゃんとした服装で来なさい」


母のその言葉に私は驚いた。

カオルみたいな不良を見ると、母はいつも心底嫌な顔をしていた。

ああいう人種には関わったら駄目よと子供ながらに言われたことを覚えている。

そんな母が、まるで交際を認めているような口振りで言ったのだ。


「お母さん…」

「寒いから先に中入ってるわね」


母はまたカツカツとヒールの音を立てながら家に入って行った。


「カオル、ありがとう!」


私が笑顔で伝えると、カオルは照れ臭そうに頭をかいた。


「もう絶対死にたいなんて思わないから、カオルも思わないで生きてね」

「…分かってるから、早く入れ」


さっきまで背筋を伸ばして立っていたカオルは気付いたらもう猫背になっていた。

格好つけるタイムは終わったのかとちょっと残念に思う。


「またね、カオル」


私が手を振る。


「またな」


カオルは優しい笑みを浮かべて、ぎこちなく手を振り返した。