Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「あなたが、佐倉カオルくん?」


カオルの苗字を母は覚えていた。

まさか名前を覚えられているとは思っておらず、カオルは私の手を離すと背筋を伸ばした。


「綺月泣く泣く返すんで、今度は傷つけないでやってくれ…じゃない、ください」


一応ギリギリだけどカオルは敬語を使う。

慣れない敬語に、私は思わず笑いそうになるのを必死で耐える。


「うちの娘が世話をかけたわね、綺月行くわよ」

「あ、うん」


母はカオルを下から上までゆっくり見ると、今度は顔をじーっと見て、そしてカツカツとヒールの音を鳴らしながらカオルの横を通り過ぎる。


「じゃあ、またね、カオル。
送ってくれてありがとう」


私はカオルに笑顔を向けると、私を散々苦しめた母親の元に行く。