学校の行事に母は来たことは無かった。

授業参観も、体育大会も、二分の一成人式だって母は毎日仕事で顔を出さなかった。

色んな大人から可哀想と囁かれ、同情の目を向ける度に悔しくて涙が出そうになった。

だから、俺をこんな風にしたのは母のせいだ。


「あんたの顔を見てると、ムカつくから」


全て、俺を一人にしてきた母のせいだ。

何もかも人のせいにして、家族のことを一ミリも大事にしてなかった俺は、当然の罰を受けた。

両親が死んで、残ったのは不良に成り下がった俺と、血の繋がりがない小学生の奈都だけだった。

親戚の助けもあてにはならなかった。

自分よりも小さくて細い手を握りながら、奈都を育てることが両親へのせめてもの償いだと思った。

だけど、実際にはどうしたらいいのか分からず、ただどうしようも無い喪失感と罪悪感で押し潰されそうだった。

当然学費のお金が払えず、学校を中退してバイトを始めた。

居酒屋のバイトに、コンビニのバイト、たまにイベントスタッフのバイトもやって、手元に入る給料は一ヶ月もすればすぐに消えた。

一ヶ月暮らせる額を、一ヶ月かけて働くことがどんなに辛いのか、自分が稼ぐ身になって初めて母の辛さに気付いた。