「お願いだから、辛いことだけを思い出すんじゃなくて、幸せだったことも思い出して。
奈都のことだけじゃなくて自分のことも考えて」


カオルにとってはどれだけ年月を重ねようとも自分を許すことは出来ないのかもしれない。

でも、それでももう4年は経ったんだよ。

奈都は自分の夢に向かって頑張ってる。

カオルも前を向いて。


「カオルの人生は、カオルだけのものでしょ?」


私はいつしか言ってくれたカオルの言葉をそのまま伝えた。

私にこの言葉を伝えた時、カオルはどんな事を思ったのか思い出して欲しかった。

カオルが思っていたことが今私が思っていることだから。


「カオルが要らないって言っても、私はカオルのそばにいる」


高校生で止まっているカオルを、私は優しく抱き締める。

子供をあやすように、背中をポンポンとゆっくり叩く。


「カオルは私を助けてくれた。
だから、私に出来ることがあれば全部やる」


それでカオルが生きてくれるなら、全部してあげる。