Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「そんなある日、奈都の誕生日に家族で水族館に行こうって話が出たんだ。でも、俺は当然行くつもりなんてなかった。受け入れられない妹の誕生日に、母はもっと仲良くなりたいがために提案したんだと思う。奈都はそれを楽しみにしていた」


カオルがポツポツと弱まってきた雨のように、間を開けて話す。


「だけど、父親の仕事の都合で行けなくなって、奈都が母に駄々を捏ねはじめたんだ。
あんまり行きたいと泣き叫ぶもんだから、急遽父親が仕事を切り上げて帰るってことになったらしく、母は雨だからって駅まで父親を迎えに行ったんだ」


その間、カオルは家には居なかったんだろう。


「家に帰ると奈都はいなくて、子供スマホのGPSで確認したら、一人で水族館に向かっていたんだ。
雨の中バスに乗り継いで、迷ったのかよく俺が遊んでいる場所で下りて、ウロウロしているのがGPSで確認できた」


小学生の奈都がバスに乗り継いで無事に水族館に辿り着けるわけがない。

降りるバス停を間違ったのかな?

私はそう考えた。多分カオルも。


「何も知らない俺は、母からの電話を無視した」


弱まったのにまだ止まない雨が、カオルの心を表しているようだった。

私は、カオルの言葉と言葉の間の呼吸が少し震えているのに気付いた。