Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

私の強い目に母が折れ、その後母は学費を払うことと、毎月生活費としてお金を渡すことを約束してくれた。

もしもの時のために、私が今住んでいるカオルの家の住所も母に教えた。

中三の女の子の家庭教師をやっていることを伝えると、最後までしっかりやりなさいと背中を押してくれた。

それがとても嬉しかった。


「綺月」


帰り際に母が呼び止める。


「あの時、本当は……行かないでって言いたかったの」


“あの時”とは、私がカバンを一度取りに帰ったときのことを言っているのだろう。

母の口にした言葉は消えるわけではないけど、その言葉を聞けただけで今日会いに来てよかったと思えた。


「…いつでも帰ってきなさい」


母はそう言って、私に背を向けて帰っていった。

徐々に小さくなる母の後ろ姿を眺めながら、前よりも息がしやすくなっていることに気付いた。

まだ、普通の親子の関係と呼べるほど、長年の溝はまだ深いままだけど、これから少しずつ修復していけたらと前向きに考えていた。


「帰りますか」


緊張で強ばっていた肩を下ろして、私はまた一歩一歩歩き始める。