Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「綺月」


母は確かめるように、たった三文字を強く口にした。


「こんな母親は、切り捨てなさい」


懇願するように言う母に、私は胸が痛くなった。

母も、私と同じで苦しんでいた。

それを知れただけでも、生きていてよかったと、またカオルやみんなに感謝した。


「今までなに不自由なく育ててくれたこと、凄く感謝してる」

「…やめて」

「お母さん」

「もう切り捨てなさい!」

「やだ!!」


母の声よりも更に大きい声量で、子供みたいに駄々を捏ねた。


「私にとって、お母さんはたった一人のお母さんなんだよ!私のこと愛してくれてるなら、ずっとお母さんでいてよ!」


母はずっと強い人だと思っていた。

そんな強い母を見て、幼い時の私は少しだけ憧れていた時期があった。

こんな強い女性に自分もなりたいと。

だから、いつもみたいに堂々と立って強く生きて欲しかった。

私がまた憧れるような存在になって、お母さん。

母の堪えていた涙が、一筋綺麗に頬を伝って落ちた。

遠回りをしすぎたけれど、今からでもやり直せるはずなんだ。

いつかまた、お姉ちゃんと三人で家に住みたい。

私はこの瞬間、お姉ちゃんが幸せでいられますように、という夢から、新しい夢に変わった。