「いつの話よ」

「でも実際、ずっと成績トップじゃん」

「まぁね」

「いいな~私も1回でいいから綺月(はづき)の頭脳を貸してもらいたいな」

「そんなこと言う前に、菜穂は授業をちゃんと聞いたほうがいいわよ」


そう言いながら私は菜穂の後ろに視線を送ると、菜穂はまさかと顔を引きつらせながら後ろを振り向く。


「ヒィッ」


そこには、菜穂がもっとも嫌う数学の教師が仁王立ちで立っていた。


「後ろを向いて授業を聞くほど余裕な武田には、次の問題解いてもらおうかな」

「えっ」

「解けなかったら罰として、課題を明日までに提出してもらうからな!
もちろん全て正解するまで帰さないぞ」

「はぁ!?」

「なんだ?余裕だろ?お前はなんたって後ろを向きながら授業を聞いているんだからな」


菜穂は今にも泣きそうな酷い顔で後ろを振り返り、私の顔を見る。

私は冷たく「ドンマイ」と口パクで言うと、菜穂は悲しそうに前を向いて「わかりません」と小声で答えた。

答えが分かったのなら教えてあげればいいのに、我ながら、なんて冷たい友達なんだろう。