Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

リビングにも部屋にもいなかった。

最後に一応風呂場を確認すると、奈都は小さな浴槽の中に入り、うずくまって座っていた。


「奈都!」


私は奈都の肩を揺らすと、ゆっくりと顔を上げた。

ずっと泣いていたのか、瞼と鼻は真っ赤で腫れていて、涙が乾いて跡が残っていた。


「どうしたの?なんでこんなところにいるの?」


奈都は私を見ると、また泣き始めた。


「だって、お兄も帰って来ないし、綺月ちゃんも帰って来ないから!」


母が倒れたことに気を取られ、昨日奈都に連絡をするのを忘れていた。

居候の身だし、たった一日帰らなかったくらい問題ないだろうと思っていた。

私は小さい子供のように泣きじゃくる奈都を抱き締めると、優しく背中をさする。


「ごめん、ごめんね」


奈都は一人でいることに慣れていると思っていた。

でも違った。

寂しくないわけがないんだ。

多分唯一の肉親である兄がもうずっと家には帰って来ないことに、心配と寂しさでキャパオーバーになったのだろう。

一人にしてしまったことに申し訳なくなり、私は泣き止むまでずっと背中を摩った。