Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

家に帰らなくなっても、学費は払ってくれているし、携帯もずっと使えている。

普通なら怒って娘との縁を切ることも考えるはずなのに、母は私に何も取り上げてはいないことに今更気付いた。

自分の部屋の扉を開けると綺麗にされていて、ゴミ一つ床には落ちていなかった。

もう何ヶ月も家に帰っていないから、私の荷物など無くなっているかもしれないと思っていたのに…

そういえば、いつだって私の部屋は綺麗だった。

グチャグチャにして出ていったお姉ちゃんの部屋も、気付くと綺麗に片付けられていて、私の部屋と同様床にはゴミも落ちていなかった。

約二年間帰ってきてないお姉ちゃんの部屋を、ずっと綺麗に保っているのは間違いなく母だった。

着た服がいつの間にか綺麗になって棚にしまってあったのも、ゴミ箱に溜まったゴミがいつの間にか空になっていたのも、布団が気付いたらフカフカの良い匂いになっているのも、全ては母だった。

そういえば、母の部屋は普段どんな感じなんだろうと、滅多に入らない母の部屋が急に気になった。

そして、この日初めて私は母の部屋に入った。


「…え」


あんなに几帳面な人なんだ、綺麗に整理整頓されているのだろうと思っていた部屋は、全くの真逆で沢山の物で散乱していた。

いくつもの資料や分厚い本が机の上だけでは無く、ベットの上も床にだって散らばっていた。

着た服が一箇所に山のように置かれていて、綺麗にハンガーにかけられているのは、どれも母が仕事に行くとき着ていた正装の服だった。