Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

聡さん達がカオルを怒らせた張本人に話を聞いたところ、彼は自慢するようにあることをつい口走ってしまった。

他の暴走族の不良から、自分の喧嘩の強さを買ってくれてメンバーに入らないかと誘われたのだと。

そして冗談で「Againから抜けてそっちに行こうかと一瞬思ったわ!」って笑いながら言った。

その言葉に、どう思ったのかカオルは「一瞬でも思ったならさっさと消えろ」と毒を吐いた。

その後、彼はカオルの殺気に驚いて、言い訳を捲し立てて弁解したが、それは彼にとっては逆効果で、余計なことまで口にして更にカオルを怒らせてしまった。

傍から見れば、窓ガラスを割るほどのことでは無かったが、カオルにとってはその冗談さえも許せないことだったのだろう。

だけどその話を聞いて私は違和感を感じた。

以前菜穂が、縛り付けるとカオルはAgainから離れてしまうと、聡さんが口にしていたという話を聞いた。

でもこれではまるで、カオルの方がAgainに執着してるように見える。

考えれば考えるほど私はカオルのことが分からなくなった。

分かりたい、知りたい、でもそこまで踏み込んでいいのかと躊躇う。

カオルが必死で隠して平然を装っている部分に触れて、強く拒絶されたらどうしよう。

もしかしたら、ますますカオルが自分の思いを内に秘めてしまって最悪な状況になる可能性も考えられる。


「…私に、出来ることなんてない気がする」


気付くと、そう口にしていた。

自信が無い。

助けてあげたい、味方でいたい、恩返しがしたい、ずっと感謝している、そんなものは口だけだ。

結局、私は母から逃げて、カオルから逃げて、みんなから逃げている。

それが物凄くいたたまれなかった。