Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜

「…綺月?」


動きが止まる私を見て、お姉ちゃんが大丈夫?と肩を叩く。

みんなは話に集中していて、風鈴の音なんて聞こえていなかった。

重たい空気の中で、軽快で涼しい風鈴の音は結構響いていたのに、みんなは気にも留めなかった。

私が勉強だけをしていた時もそうだった。

外の音も、誰かの声も、自分の呼吸すら聞こえないくらい、母の一つ一つの言葉が耳から離れなかった。

カオルもそうなのではないだろうか。

多分カオルは、私が風鈴をぶら下げたことすら知らないだろう。

何度部屋に出入りしても、風鈴の音は耳に入らないくらい、カオルの周りは雑音だらけで、みんなの声が聞こえないくらい、カオルには沢山の嫌な音や声がまとわりついているのかもしれない。

今日のことも、カオルは自分が窓ガラスを割ったことすら気付いていないようだった。

我に返って、周りを見て、自分を見た時、そこで初めて自分がやったのだと頭が理解する。

それはとても怖いことだと私は思った。


「カオルは、どうして怒ってたんですか?」


そういえば、私は今日の事の発端をまだ聞いていなかった。