「綺月、大丈夫?」

「...大丈夫」

「待って、頬腫れてる、あの子達に何かされたの?何があったの?」


菜穂は熱を持った頬を優しく自分の手で包む。

海斗は面倒くさそうに頭をかきながら私の前に立つ。

何を言おうか言葉を選んでいる海斗よりも先に私が口を開いた。


「余計なことしないで」

「はぁ?」


助けてもらったのに、感謝とは正反対の言葉を言う。


「次殴られたら殴り返すつもりだったのに」


カオルの価値が下がるだとか、つまらない男だとか、好き勝手言いやがって…本当腹立つ。


「あんたもあんたよ、あんな女相手にしてる時間あるなら奈都と一緒に勉強でもしろ」

「こいつ結構口悪いな」

「あー腹立つ…
カオルのこと馬鹿にする奴全員ハゲろ」


私は怒りながら、一喜さんに貰ったまだほんのり冷たいジュースを頬に当てる。

私がこんなにも怒りを露わにしているのを見るのは菜穂も初めてで、みんな戸惑っていると吹き出すような笑い声が聞こえてくる。