試合開始5分

千尋の活躍で私はかなり暇になっていった


「全然こっち来ないじゃん」

ま、シュート止めなくていいし、楽ちんだし最高か!


「やっぱ、このリストバンドの愛のおかげかなあ」

私はニヤニヤとリストバンドを見つめていた

「陽和!」

え?


ヤバイこっちに皆が走ってくる!


と、止めなくっちゃ!


私の目の前でシュートが打ち込まれる


「死んでも、止めてやる!」


私はボールに向って飛び込んだ


ボールは加速し大きく膨らみ


え?


私の顔面を直撃した


「陽和!!」

私はボールと共に地面に倒れこんだ


「大丈夫?」

千尋が駆け寄り私の肩に手をかけた



い、痛い!


痛すぎて声が出ないし

涙が…


ポタ…

へ?

血??


ボタボタボタボタ…


「陽和!大丈夫!」

鼻血が

鼻血が止まんないよ~


「これ!」

審判をしていた男の子が、冷たいタオルを私に手渡し、肩をかかえて木陰まで運んでくれた


「大丈夫?少しここで休んで」

めちゃくちゃイケメンが覗きこむ


この人

確か、サッカー部のキャプテンだった
3年の月島先輩…

「すぐ保健の先生来ると思うから」

「はい…」



慌てて保健の先生が走ってきた

「月島くん、ありがとう…後は大丈夫だから試合に戻って」

「はい、じゃあ」

心配そうに私をチラリと見た後、走ってグランドに戻っていった


なんて、爽やかでカッコいいんだろ

確か、サッカー部のプリンスって呼ばれて
たよね


イケメンにこんなカッコ悪い所を見られるなんて

それも碧斗の先輩に…



先生がタオルをゆっくりとはずす

「うわあ、唇も少し切れちゃってるね」


えー!
マジっすかあ??

「ちょっとしみるけど我慢してね」

ギョエエエ…!!!!

容赦ない先生の攻撃が始まった