身代わり少女は主人を慕う

部屋に戻る途中、宗吾様が立っていた。

「音羽。」

どうやら、私を待っていたらしい。

急に首筋に感じた、生ぬるい息遣いを思い出す。

「大丈夫だったか?音羽。」

肩を掴まれそうになったけれど、反射的に避けてしまった。


「あっ、いえ、すみません。」

謝ってみたけれど、宗吾様の顔が見れない。

その時ふいに、宗吾様の指が、私の顎を持ちあげた。

「美しく育ったな。」

「えっ……」

逃げなきゃ。

やっぱりこの人は、音羽さんを狙っている。

でも、怖くて体が動かない。

「こんなに震えているのに、実の兄と逢引きだと?はっ。世の中、面白いものだ。」

「お、お兄様?」

すると宗吾様は、私を抱きしめた。

「大丈夫だ。俺がいる。」

また首筋に、生ぬるい吐息を感じた。