「はい……」

将吾様の匂いが、ほのかに香ってくる。


「将吾様、うたさん。」

亮成さんの声が聞こえる。

「ああ、今行く。」

将吾様の腕が、するりと抜けた。


頬が熱くなる。

『うたは、一人じゃないよ。』

将吾様に言われた言葉が、体中を熱くさせる。

「うた、早くおいで。」

将吾様の呼びかけに、体がスーッと引き寄せられる。


将吾様。

私、将吾様の事、好きになってもいいんでしょうか。

そんな事を思って、フッと笑った。

許される訳ないのに、そんな事思って。


「うたさん。明日は、女学校へ行きますから、今日より早く起きて下さい。」

「はい。」

考えてみれば亮成さんも、叶わない恋に悩んだんだよな。

そう思ったら、涙が出て来た。


ううん、それでも構わない。

私は、将吾様のお役に立つように、頑張るだけだ。