「両手もついて。」

「はい。」

目の前に、両手をついたのも、生まれて初めてだった。

「指は揃えて。」

「はい。」

「そうそう。」

言われても、明日からできるかどうか、分からない。

「帰ってらした時も、お帰りなさいませ。もちろん、両手を揃えて。」

「はい……」

とにかく、将吾様には頭を下げろって事ですかね。


「それから、髪型なのですが……」

「はい?」

髪型まで?

お嬢様って、何かと細かいんだな。

「髪は一つに結わえるのではなく、脇の毛束を後ろに持って行って……」

私は紐をほどくと、亮成さんの言う通りにした。

「そうそう。その他の髪は、そのままおろして……そうだ、リボンも結びましょうか。」

「りぼん?」

「西洋から入ってきた、紐を結んである髪飾りです。女学校に行かれる際、お嬢様はその様にされていました。」