身代わり少女は主人を慕う

「これだけ探してもいないと言う事は、遠くに行ってしまったか。或いは、匿っている誰かがいるって事だ。どちらにしても、妹がこの結婚を心底嫌がっているのは分かる。」

「まだ、結婚したくないって言うだけでは……」

「妹はね。今まで親にも僕にも、一度も逆らった事はないんだ。それが見ていて、もどかしかったけれどね。だから、結婚したくないって言う理由だけで、家を出て行ったりはしないと思う。」

その妹さんを想う将吾様の言葉に、爽やかな風が、庭の中を駆け抜けた。

「……妹さんの事、本当に大事にしているんですね。」

将吾様は、くしゃっとした笑顔を見せてくれた。

「ああ、そうだね。たった一人、血の繋がった妹だからね。」

その時、私の胸の中で、幸せな気持ちが広がった。

今まで将吾様は、整った笑顔しか、見せてくれなかったから。


「それでなんだ。うたさんに、妹の身代わりをお願いしたのは。」