彼の結婚、私の今後。【短編】

歩いて五分の昔ながらの喫茶店に入った。
何組かいるが、それぞれ一人づつで新聞を読んでいたり、学生が課題をしていたり。
私たちの存在はあきらかに異質だった。私たち三人はアイスコーヒーを頼んで、りんちゃんはプリンをたのんだ。

「改めて、会ってくださってありがとうございます、なつきさん。なんとお礼をお伝えしたらいいのか…」

彼女は背中をしゃん、と伸ばしてそういった。生真面目そうな、女性だった。黒髪はぴっしり一つに束ねていて、銀ふちのフレーム眼鏡をかけている。ただ気になったのは、青白い肌、かさついて紫がかった唇、骨ばった手。

「わたしたちのいきさつはきいていますか？」

「ふんわり、結婚するだけを伝えられて…正直なんで私に会いたかったのかは分からず」

そう正直に伝えると、隣で気まづそうな彼を佐藤さんは咎めるように見ていた。

「じゃあ、なんで私が会いたかったのか不明でしょう。なにいわれるかわからないのに本当に来てくださって、ありがとうございます」

律儀にお礼を言われて、恐縮して同じく頭を下げた。