彼の結婚、私の今後。【短編】

「結婚か」

言葉にしたら、子宮に重く響いた。相手がいて、はじめてできるものだ。お互いに支えあおうとして、契約する。私の母と父もそうだったのだろうか。彼も。彼の恋人も。

世の中の恋人たちはなにを持って結婚という結論にいたるのだろう。
机の上においていたスマートフォンが震えだす。着信は母からだった。
結婚について考えているときに、母からとは、なんという嗅覚だろうか。
すごく明るい昔のままの母の声が飛び込んできた。

「なつき、元気やってる？お父さんとこないだ静岡まで旅行にいったから、お土産送ろうと思って。日時と時間指定したいんだけど」

うなぎパイでしょう、富士山クッキーでしょうと色々楽しそうに話す母親はきっと少女みたいな表情で言っているにちがいない。私のほうが老けていくスピードが速い気がする。

「ありがとう、平日はできれば七時頃が受け取れるよ。休日は午前中のが嬉しい」

「そうね、ありがとう、それといとこの千絵子が結婚するから結婚式来てほしいって」

「千絵ねえちゃんが？」

三歳年上のいとこである。聞き返したのは、彼女は仕事が恋人で出張と転勤を繰り返している管理職だからだ。本人も諦めていたし、なにより忙しすぎて出会いはしても続いていかないという。