「俺の事、……怖くなった?」


もうどんな風に終わってもいい。そういう思いで、桜十葉に尋ねた。でも、桜十葉は俺の背中に回した手を離そうとはしなかった。


「っ、…バカだなぁ裕翔くんは。本当に、バカだよ」


桜十葉はそう言って、俺の頭をくしゃっと撫でた。

わけが分からなくて、不安な気持ちが広がる。


「そんな事ない。だって、ヤクザの息子だろうが、総長?だろうがそんな事、私にはどうだっていいもん。裕翔くんは、裕翔くんなんだから」


その言葉に、胸が震えた。

どこかで分かっていた。そして、どこかで弱い自分が桜十葉の事を信じていなかった。


「っ、……おとはっ」


俺は小さくて華奢な体を強く抱きしめる。

直ぐに、壊れてしまいそうな大切なもの。

もし、彼女が過去を思い出してしまったら今度こそ、俺から離れていってしまうだろう。

俺はそんな不安も抱えながら、桜十葉にもう一度キスをした。二日ぶりに重ねた桜十葉の唇。

とても柔らかくて、それだけで涙が出そうになった。

俺はやっぱり、桜十葉なしでは生きられない。

桜十葉があの日のことを思い出してしまったら。もし、またあの日のことが繰り返されてしまったら、俺はもう、そばにいる事さえ許されなくなる。


「裕翔くん、……。私もね、言いたいことがあるの。私、裕翔くんの事が……大好きだよ」