私達は買い物を済ませ、帰路につく。
やっぱり、何かおかしい。会計をしてくれた中年の女性も裕翔くんの事を知っているようでオドオドしていた。
何かに、恐れているように……。
私のことを見てきた店員さんたちの目に心配の色があったのは私の杞憂だろうか。普通、どこかの御曹司とかならそんなに恐れられないはずだよね……?
考え出すと、これまでの色んな場面が蘇ってきて、私は益々混乱してしまう。
「裕翔くんは、……なんて言うか、日本中みんなが知ってる御曹司とかなの?」
なるべく、疑いの目を向けないように。
なるべく、裕翔くんの事が少し怖いと感じていることを悟られないように。
「……」
裕翔くんのニコニコと笑っていた顔が一瞬だけど、無表情になった。
私はその事にまた怖くなる。
裕翔くんは一体何者なの?
どうして世界的に有名な私の両親と知り合いだったの?
どうして、そんなに私に優しくするの?
どうして、どこにでもいるような女をそんな風に愛おしそうに見つめるの?
全部、全部分からないこと。
それを聞いたらいけないような気がして、それを聞いてしまったら裕翔くんが居なくなってしまいそうで……。
私は裕翔くんの事が怖いんじゃない。
裕翔くんが私から離れていってしまうんじゃないかっていう事がとても、怖い。
「俺は、……っ」