「桜十葉、私が思ってた以上に愛されてるね。心配する必要なかったみたい」
明梨ちゃんは、少しだけ大人びた口調で私にそう言った。私はそんな明梨ちゃんを見て不思議に思い首を傾げる。
「私さ、正直不安だった。……桜十葉が記憶をなくしたことがもしかしたら昔の彼氏さんのせいなんじゃないかって。今の彼氏は、昔の彼氏に似てるけど、雰囲気とかが全く違うよね」
明梨ちゃんは私にだけ聞こえる声でそう言った。その声は、優しさに溢れていた。
「うん。裕翔くんって言うの。すごく優しい人だよ」
私のことを大事にしてくれて、裕翔くんの口から出る言葉には全て、優しさが詰まっている。でも、裕翔くんは優しさだけじゃなく、強さも私にくれる。
私の背中をいつも押してくれていたのは裕翔くんだ。
「俺、桜十葉にめちゃくちゃ愛されてんね。すっごい嬉しい」
私の肩に、裕翔くんの顔がちょこんと乗せられた。私はそれにビクッと驚いて、一気に顔の熱が上昇していくのを感じた。
今の、聞かれてた……?
凄い恥ずかしい…っ!
「ふふ、やっぱり違う。……あの、裕翔さん」
「?」
明梨ちゃんが私たちのことを微笑ましそうに見つめていた。そして裕翔くんにとても強い目線を向けた。
「桜十葉のこと泣かせたら、私が桜十葉を奪いに行きますからね!なんてったって私は桜十葉の親友なので!」