背中に壁の冷たい温度が伝わる。だけどその冷たさが、火照る私の体を冷ましてくれているようだった。
「んっ、……んぁ……ひろと、くん…っ」
「ねぇ桜十葉、なんであいつのこと名前呼び名なの?なんで抱きしめ合っていたの?」
裕翔くんの怒りと不安が唇越しに伝わってくるようだった。キスをしながら喋る裕翔くんはとても器用だ。自分から質問をするくせに、それに答える機会を与えてくれない裕翔くん。
真陽くんを名前で呼ぶ理由は、私がそう呼びたいから。
友達だから、もっと仲良くなりたいから。
私が真陽くんと抱きしめ合っていたのは、告白を受け取れなかったせめてもの償いだから。罪悪感だけが、心の中に残るのは嫌だったから。
裕翔くんは私の制服の下にするりと手を滑り込ませた。
裕翔くんの温かい手が、私の肌を直に撫でる。
「…はぅ…っ」
「気持ちいいんでしょ?桜十葉は誰にでもこうやって近づいちゃうの?」
その手はどんとん上に行き、胸に触れそうになった。私の頭の中はぐるぐると回り続けていて、恥ずかしすぎて今にも死んでしまいそうだ。
「ちが、…うっ……」
「ねぇ、もうあいつと喋らないで。他の男のこと見るのも禁止。もし見たら、……桜十葉のことを抱き潰してしまうから」
裕翔くんの目は、本気だった。その瞳に囚われて、一生離れられなくなりそうで。