公園に着くと、先に桜十葉が来ていた。もうちょっと早く来るべきだったかな。


『桜十葉、お待たせ』

『あっ!裕希』


桜十葉は俺を見てふわっと微笑んだ。この笑顔をもう見れなくなると思うとすごく悲しい。


『桜十葉。実は、伝えなきゃいけないことがあるんだ』


早く、別れを告げないと……。早く、桜十葉から離れないと……。心の中で嫌な焦燥感がどんどん広がっていく。


早く言わないと、俺の決心が鈍ってしまいそうだったから。だから、


『他に好きな人が出来たから、もう別れてほしい』

『え、……?』


言えた。言えたぞ、俺。頑張った。だからもう、いいんだよ。

くだらない妄想を抱くのも、ありもしない幸せを必死になって掴もうとするのも。止めれば、案外辛くないのかもしれない。

桜十葉は顔を真っ青にさせて動揺していた。辛かった。そんな桜十葉の辛い表情を見るのが。俺はそれを見ていたくなくて、目を背ける。


『桜十葉、聞いてる?別れてって言ってんの』


本当は、別れてほしくなんかない。ずっと、俺の隣に居てほしい。


『ど、どうして?』


そんな風に、苦しそうな目を向けないでよ。その瞳に映る俺が、汚い人間に見えてしまうから。