『今も昔も、相変わらずキメェな。咲羅』

『ああ?様を付けろよ、様を』

『はっ…!お前はそう呼ばれる価値なんてないだろ。このゲス野郎が』


裕翔くんは今もなお掴みかかってくる男を蹴飛ばして、玖音咲羅の方に近づいていく。

劉娥組の若頭と仲が悪いのは、裕希さんだけじゃなかったんだ……。


『なあ裕希。お前の弟、殺しちゃっていい?』


玖音咲羅の指と指の間からシュッ!!と鋭い刃のナイフが現れた。その瞳は真っ黒で、まるで光がない。

可哀想だ、と思った。この人は、冷たい世界の中で一人孤独に生きてきたんだ、と思った。


『なあ兄貴。俺、兄貴のケンカ相手殺してもいいよね?今、すげぇ興奮してんだよ』


獣のように鋭く光る瞳を裕希さんに向けた二人。


『は、……?お前ら、何言ってんだよ』


私を庇う裕希さんの背中が震えている。私は、その状況を何だか他人事のようにしか見られなかった。


『『『ヴォーー!!!!総長!!!!只今、山海滉大率いるKOKUDOの幹部たちが勢揃いいたしました!!!!』』』


倉庫の外からバタバタと大きな音がして何百人にもなる黒の特攻服を着た暴走族たちが現れた。


目をキラリと黒く光らせた裕翔くんは、色気たっぷりにニヤリと笑って、手を上げた。


『若、こちらも準備ができております』

『ああ、ありがとう。助かるよ』