裕翔くんはすぐに私のもとに駆けつけ、私を抱きしめている裕希さんを見た途端、綺麗な顔を苦しそうに歪めた。


「な、んで……」


裕翔くんは私の方なんか一度も見ずに、裕希さんに釘付けになっている。

裕希さんはとても楽しそうな顔をして、ゆっくりと立ち上がった。


「よう、……裕翔。何年ぶりだろうな?お前の兄貴がわざわざ会いに来てやったぜ」


顔がそっくりな二人はまさか兄弟なの────!?


「っ‼︎お前、桜十葉に何してんだよ‼︎」

「何って?ただ逃げられないように手を縛ってるだけだけど」


裕翔くんは冷たい床に座り込んでいた私を立たせ、キツく縛られていたロープを解いてくれた。

さっき、裕翔くんが来てくれて安心した事で抜けてしまっていた力はまだ今もそうで、私は裕翔くんに体を預ける。


「とにかく、……二度と俺と桜十葉の前に現れるなよ」


裕翔くんがこんなに怒っているのを見たのは今日で初めてだった。


「ふっ、それは出来ないかも」

「っ!!なんだと、ごらぁ!!!」


裕翔くんが私を自分の背中に隠して、裕希さんを一発殴った。

い、痛そう……!

裕翔くんに殴られた裕希さんも負けじと殴り返した。傷つけあって、どんどん傷を作っていく2人。

裕希さんのことはまだよく知らないけれど、それでも私はこの2人が傷つくのは嫌だった。