具現術師は今日も行く！

　そして閉店後、勇者と魔王の二人の店では…

「…あの人、料理は自分でするらしいね」

　片付けを始めた勇者は魔王に切り出す。

「へえ。さすが、彼に意見を聞いていると料理にこだわりを持っていると思うわけだ」

　魔王がそれを聞き納得して頷くと、勇者はしっかりと魔王の顔を見て尋ねる。

「ひょうきんなところがあるけど真面目だしね。…で、どうだろう？」

　魔王は勇者を見て呑気に笑った。

「ああ、あんたも同じことを考えてた？…彼に、聞いてみる？」

「彼が決めることだけどね。何て言うかな？」

　勇者がそう言って首を傾げると、魔王はまた呑気に笑う。

「さあ、聞いてみるだけ良いんじゃない？『ちょっとこの店で働いてみない？』って」


　まだ何も知らない『具現術師』の彼。
　彼は次の日も近くの街の市場で自らの描いたデザインを売り、客のために瞬時に組み立て、笑顔で二人の店に向かったのだった。