「…ではまた明日。ありがとうございます」

 半日ここで仕事をした彼は、充実した気分で挨拶をする。

「あ、またお願いします!」

「じゃあまた、どうも」

 彼はそれぞれの挨拶を聞き、店をあとにした。


 その日から彼は何日かに分けて、二人の店の内装を手伝いに行った。

「…自分が冒険に行って獲得した金が、初期の食材費に当てる分に消えていく…誰かさんが試作と称して味見ばっかり作るから…」

「俺は内装費用は出したからね。あとは学費に当てたからなあ」

 勇者の愚痴に、魔王の呑気な言動。
 彼は二人のやり取りに笑い、日に日にその和やかな様子に馴染んでいく自分に、こういうのもいいものだと思い始めた。


 そして無事開店にこぎつけた二人の店。

「あ、いらっしゃい!」

「一番乗りですね!何にします?」

 旅をしていたはずの彼は自分でも気付かぬうちにいつの間にかこの街に居つき、二人の店に馴染みの客として時たま現れるようになった。

「魔王さんも勇者さんもお疲れ様です!魔王さんは学校がお休みですか?今日はね〜…」

 カウンターに立つ二人を見て彼はすっかり馴染み、愛嬌のある顔で笑う。


「…ごちそうさまでした〜!じゃあ、またっ!」

 食事を終え満足した彼は、他の客の来始めた二人の店を元気の良い挨拶で後にした。