「うん」

 美千花(みちか)首肯(しゅこう)したのを確認した律顕(りつあき)が、「だから僕は再来機が見える位置でずっと君の事を待ってたんだ」と言って美千花を驚かせる。

「そこからは君に見付からないよう気を付けながら、ずっと付かず離れず美千花の事を見守ってた」

「嘘っ」

 思わずつぶやいた美千花に、「ごめん。やっぱりストーカーみたいで気持ち悪いよね」と、律顕がしゅんとする。

 美千花は、「だから言いたくなかったんだ……」と小声で付け加えて項垂(うなだ)れる律顕をじっと見詰めて。

「確かに驚いたし……普通に付いて来てくれたら良かったのにって思ったよ?」

 そう告げて、律顕を更に縮こまらせる。

「でもね、気持ち悪いだなんて微塵も感じなかった! だって律顕。私の事を心配してくれての事だったんでしょう?」

 知らない人にされたなら、確かに怖いし気持ち悪い。でも、相手は愛する夫だったから。

 ニコッと笑ってそっと彼の手に触れたら、律顕がハッとしたように顔を上げて美千花を見た。

「美千花、ここ最近ずっと調子悪そうだったから……」

 診察が終わってからも、美千花の事が心配でそばを離れられなかったらしい。

 だからなのだ。