稀更の告白に「えっ」と驚きの声を上げたら、「美千花さんが入社した時には私、もう既婚者だったからね。苗字の事なんて気にしないよね」と微笑まれた。
でも考えてみれば美千花が入社した時だって。もっと言えば稀更が第二子出産の為の産休に入った時だって、彼女はずっと変わらず西園だったわけで。
美千花は、どうしてその事に思い至れなかったんだろうと恥ずかしくなった。
恐らく美千花にとって稀更は、単純に〝西園先輩〟以外の何者でもなかったのだ。
それは美千花が稀更を個人として見ようとしていなかった現れな気がして申し訳なく思ってしまう。
今思えばまったくもって馬鹿な話だが、律顕が美千花に告白してくれた時だって、稀更は既に有夫だったわけだ。
だからこそ美千花が稀更との恋人関係を疑った時、律顕は「有り得ない」と一蹴したのだと、今なら実感を伴って思える。
でもあの当時の美千花は――と言うよりもしかしたらつい今し方に至るまで、同期とはいえ課も違うはずなのに仲の良い二人に、〝あの二人は怪しい〟と言う下卑た噂を、心のどこかで信じてしまっていた。
それこそ、稀更の結婚の事実も知らなかった頃などは、独身者同士だと決めつけてさえいた。
でも考えてみれば美千花が入社した時だって。もっと言えば稀更が第二子出産の為の産休に入った時だって、彼女はずっと変わらず西園だったわけで。
美千花は、どうしてその事に思い至れなかったんだろうと恥ずかしくなった。
恐らく美千花にとって稀更は、単純に〝西園先輩〟以外の何者でもなかったのだ。
それは美千花が稀更を個人として見ようとしていなかった現れな気がして申し訳なく思ってしまう。
今思えばまったくもって馬鹿な話だが、律顕が美千花に告白してくれた時だって、稀更は既に有夫だったわけだ。
だからこそ美千花が稀更との恋人関係を疑った時、律顕は「有り得ない」と一蹴したのだと、今なら実感を伴って思える。
でもあの当時の美千花は――と言うよりもしかしたらつい今し方に至るまで、同期とはいえ課も違うはずなのに仲の良い二人に、〝あの二人は怪しい〟と言う下卑た噂を、心のどこかで信じてしまっていた。
それこそ、稀更の結婚の事実も知らなかった頃などは、独身者同士だと決めつけてさえいた。