律顕(りつあき)が……会社に?」

「ええ、つい一時間くらい前に会ったばかりよ」


 通りで荷物を取りに帰っただけにしては時間が掛かるはずだ。
 美千花は、色々な物がどこに仕舞ってあるのか分からなくて、律顕が荷造りに手間取っているのだとばかり思っていた。
 でも、どうやらそれだけではなかったらしい。


「彼がそんな風に休むなんて珍しいから『何かあったの?』って聞いたら『美千花が入院することになった』って言われて……。私、居ても立っても居られなくなっちゃったの」


 稀更(きさら)の言葉にふと時間が気になって、律顕に頼んで枕元に置いてもらったスマートフォンを見たら、十七時半(ごじはん)になろうかと言う所。時間的に見て、稀更もここへ来るために時間給を取ったのかな?と思った美千花だ。

 遅くなればお子さん達のお迎えにも響くだろう。
 そんな中、わざわざ時間を割いて会いに来てくれたらしい稀更に、美千花はほんの少し肩の力を抜いた。