目を開けると、真っ先に白い天井が目に入った。

 家の寝室の天井も白色だけれど、柄が違う事に違和感を覚えた美千花(みちか)が、そろそろと視線を彷徨(さまよ)わせたら、薄桃色のカーテンが見えて。

(パーティション?)

 恐らくはそれ代わりのカーテンだ。

 ふと視線を転じた先、点滴の輸液バッグが点滴スタンドに掛けられていて、そこから降りたチューブが、自分の左腕に伸びていた。

(病、院……?)

 どう考えてもそうとしか思えなくて、自分の不甲斐なさに小さく吐息を落としたら、

「美千花っ? 目ぇ覚めたのかっ?」

 泣きそうな顔をして律顕(りつあき)がすぐそばから美千花の顔を覗き込んできた。

 全然気配を感じなかったから気付かなかったけれど、ずっとベッド横にパイプ椅子を出して座っていたらしい。

(律、顕……?)

 何で?と思ってしまった。

 窓の外の太陽の傾きからして――日付が変わっていなければ――さっき蝶子(ちょうこ)と電話で話してからそんなに経っていないように思えた美千花だ。

(何時?)
 そう思って視線を彷徨わせたけれど時間の分かるものは目につく範囲にはなかった。

 体感的にはそんなに時間は経っていないような気がするけれど、休みを取っていたらしい律顕が、病院に駆け付けられる程の長い時間、自分は意識を失っていたのだろうかと疑問に思う。