スカーレットの悪女

「ふう、怖かった」



丞さんを案じていたら実莉がぼそっと呟いた。


なんや怖かったんか。とんでもない賭けに出るくらいやから全然そうは見えへんかったけど。


おっかなびっくりであの作戦思いついたとしたら土壇場でよう頭回ったな。



「そりゃそうやろ。泣くか思ったわ」

「泣かなかった私を褒めて」

「さすがですね、実莉さん」

「うん、段々大希の扱い方が分かってきた」



もし実莉が泣いたとしたらその時点で大希さんは正気に戻ってたと思うけど、姐になるだけあって度胸は人一倍やな。


そこは素直に褒めてやろ。



「大希さんのお気に入りになるのは苦労するけど、一度気に入られたらその懐は海のように深いから」

「へえ……」

「実莉さんは最速でしたよ、大希さんに気に入られるの」

「つまり私は大希ルートRTAの覇者ってことか」

「は?何言ってんねん」

「すみませんオタクなもので」


褒めたら調子乗るのは相変わらずやけど。るーと?りあるたいむなんとかはよう分からんけどゲームの単語かな。


大希さんがゲームの攻略対象としたら最高難易度やろうけど、攻略を成功させた実莉も謎が深い。


ただの生意気な女と思ったら計算づくめな魔性の女やし。


男を手玉に取るタイプと思ったら重度のシスコン拗らせて恋愛には全然興味なかったらしいし。