その日、大希は夕暮れ時に本家に帰ってきた。


なぜ分かったのかというと、私は屋敷の外で窓を磨いていたからだ。


駐車場の方から音がしたし、その後「おかえりなせぇ!」と男どもの野太い声が聞こえたら大希で確定だ。


今日はいつもより組員の声が大きかったからよく分かった。



「まーた家政婦の真似事?姐さんになるんやからそういうのやらんでええって」



大希は家に戻らず、一直線に私のいる場所に来た。


気配消してたはずなのに私の存在に気づくの早くない?いつも“小さいから分からんかった〜”とか冗談言うくせに。


そして姐さんになるつもりは今のところないし。



「だって仕方ないでしょ。おじさんがぎっくり腰やっちゃったんだって」

「そらあかんな」



私が窓掃除をしてるのは暇つぶしもあるけど、雑用係のおじさんがぎっくり腰になって動けないらしいからその代わり。



「けど実莉の身長やったら届かんやん」

「これくらいジャンプしたら届くし。ほら見て!」



頑張ってるから褒めて欲しかったのにバカにされたからムキになって飛び跳ねる。


それでもノーリアクションだったから跳びながら大希を睨みつけるとスマホを構えて「おー、頑張っとる」と動画を撮っていた。


最悪だ、醜態が増えた。子どもっぽいことしちゃった。