「てか、図体でかいくせに寒がりとかダサッ」

「その挑発顔、ムラムラするからやめてくれへん?」

「うわキモッ!最低!」



もう玄関に入ったから勝ち逃げできると思ったのに、大希はいつまで経ってもスイッチが切り変わらない。



「はあ……」



後ろにいた丞さんが大きなため息をついたその時、前方から声がした。



「遠路はるばるお越しいただき、誠に恐縮にございます」



いつからそこにいたのだろう。中性的な綺麗な男性、司水さんが玄関で私たちを待ち構えていた。


絶対今の会話聞かれてたよね。しまった、司水さんの前ではおしとやかな美少女を演じていたつもりだったのにキモイとか言っちゃった。



「ほう、組長の側近頭自らがお出迎えとは、光栄やなぁ」



大希はようやく極道としての顔に切り替わって司水さんに視線を向ける。


そんな怖い雰囲気醸し出しても、軽いノリで喋ってたんだから絶対効果ないぞ。



「ああ、ところで……」



それでも司水さんは若干警戒しているようで、大希の言葉に素早く反応して顔を上げた。



「なんでしょう」

「外に並んでる奴ら、はよ中に入れたれ。凍え死ぬで」



張り詰めた顔をしていた司水さんだったけど、大希が震えながらまた変な顔をするものだから表情を崩した。



「……お心遣い、ありがとうございます」



キャラがコロコロ変わる大希に司水さんは思いきり動揺している。


確かにギャップの振れ幅は私並みだもんな。


そう思ってなんとなく大希を見上げていると「照れるから見つめんで」なんて恥じらって笑うからうざくて、あばらめがけてに手刀をお見舞いしておいた。