「東京寒すぎ……」

「うーわ、寒っ。大阪と大違いやん、この寒さはあかん」



大希は両腕を抱え、体を震わせて歯をカチカチ鳴らしている。



「変顔しないでよ、威厳がまるでないじゃん」

「俺、寒いの苦手やねん。実莉、手ぇ繋ご?実莉子ども体温やからあったかいやん」

「誰が子ども体温よ!大希が冷え性なだけでしょ?」

「寒くても威勢いいんやな、感心感心」

「なんでバカにしてるような言い方するかなぁ。あーもう、無理やり大阪に連れ去られた悲劇のヒロイン気取ってチヤホヤしてもらうつもりが台無しじゃん」



いつもの調子で大希と言い合いながら玄関に続く石畳を歩くと、両脇に並んで出迎えた組員たちが私たちを凝視してどよめいている。



「噂には聞いてたが、あんなおっかない西の虎まで手懐けるとは……」

「実莉が怖いもの知らず過ぎてこっちがヒヤヒヤするわ」



荒瀬のおじさんたちは、せっかくムードメーカーの私が無事に帰って来たってのに微妙な顔をしている。



「大希、荒瀬のシマではせめて猫かぶっといてください」

「しゃーないやん。実莉が緊張感がなくて通常運転のせい」

「私のせいにするのやめてくれる?」



丞さんが呆れたようにアドバイスしたけど、私たちは結局いつもの調子で口数がまったく減らず玄関にたどり着いた。