すると大きく目を見開き硬直し、彼の周りを取り巻く時間が一瞬止まったように錯覚した。



「……いいでしょう、彼女も乗せてください」

「え、何言って……」

「やめろ実莉、お前まで行くな……!」



颯馬と志勇の動揺の声が聞こえる。


私はあえて振り返らず、車に乗り込んで後部座席で震える壱華の手を強く握った。



「では、相川実莉は保険として預からせていただきます」



そう言うと、佐々木は部下に車に乗り込むよう指示をした。



「みなさんが極山に囲まれて身動きが取れなくなる前に通報しておきました。今から警察が群れを成して、武装した極山を捕まえるためにこのマンションに押しかけてくるでしょう。その前に逃げてください」

「壱華と実莉をどうするつもりだ」

「おふたりは必ずお返しします。我らが宿願を叶えるまで、どうかお許しください」



佐々木は拳銃を握ったまま車に乗り込むと車はすぐさま動き出した。


唖然とする颯馬、地面を拳に叩きつけ叫ぶ志勇。


壱華を呼ぶ志勇の叫びは進むにつれ遠くなって、やがて完全に聞こえなくなった。