「理叶、スマホあった?……なんだよ、顔色悪くね?」

「相川壱華は何も知らないみたいだ」



自分の部屋に帰る途中、光冴に出会ったため単刀直入に言葉を発すると、光冴は「ああ……」と呟いた。



「だろうね。普通は自分が原因で抗争が勃発しそうなんて聞いたら実莉の誕生日を祝うなんて悠長でいられねえよ。もう死者が出てんのに」

「……」

「とは言え、あの様子じゃ荒瀬志勇も壱華を手放すつもりはねえよ。まあ、俺らがいくら掛け合ったところでヤクザ同士のいざこざは止められない。
俺としては、実莉がこれ以上害を被らなければそれでいいよ」



光冴の発言に、うなだれるようにしてうなずく。


その通りだ。これ以上死者を出すことなく終わってくれと、ただ願うばかりだった。


俺たちの行先に実莉がそばにいてくれれば、それで十分だ。