「あの、実莉……さん」



凛太郎はゆっくり近づいてきて、私の前に立った。


ひとりで追いかけてきたみたいだ、後ろに優人の姿は無い。



「実莉でいいよ。私も凛って呼ぶから」

「立場が違うから呼び捨てはできないです」



笑いかけると無表情で答えられた。


うーん、原作と出会い方が違いすぎてこの子の性格が読めないな。


原作では、壱華を恨んで殺そうとするが失敗し、その後心優しい壱華に諭されて荒瀬に忠誠を誓う。


だけど私はこの世界のヒロインである壱華じゃないから、正攻法では味方になってくれない気がする。



「なんで、俺たちを助けてくれたんですか」

「君たちには幸せになる権利がある」



だから私は焦らず距離を縮めよう。


核心には迫らず、緊張をほぐそうとビシッと指をさしポーズを決めた。

凛太郎は困惑した顔を見せた後、歯を見せて笑い出した。