「ね、すごいっしょ兄貴」



志勇の家を出て車に乗り込むと、家の中では一言も発さなかった颯馬が口を開いた。



「この前も探り入れようとしたら『その目で壱華を見るな』ってガチギレされてさぁ。
剛、あの時の兄貴怖かったよな」

「若が女に執着するとは思ってなかったから焦りましたね」



運転席の剛さんもうんうんと頷いて当時の状況を思い出している。


“その目で壱華を見るな”?それって闇色のシンデレラ序盤のシーンじゃん。うわ、本当に原作通りの展開迎えてる。


「まさかあの兄貴がひとりの女の子にお熱なんてびっくりしたよ。確かに壱華ちゃんかわいいけどさ」

「楽観的ですけど、颯馬さんはこの状況よく思ってないですよね」

「そんなことないよ」


助手席から、斜め後ろの後部座席に座ってる私をチラチラと見てくる颯馬。


何か言いたげだったから核心に迫ったら前を向いた。