子会社に入って1年半で、
仕事が認められ、この会社を任せて
貰えるようになった。
学生の分際でと言われる事も多かったが、自分なりに頑張ってきた結果だと思うと
自信が持てた。少なからず幸太が
言っていた人に私は近付けてる
だろうか?
今だったら分かる。
それが誰でもいい訳ではないことを。
それでも私には幸太に好きになって
貰えるような理由が欲しかったのだ。

私は4年生になったが、卒業後も
引き続き今の会社で仕事をしていく為、
就職活動は必要なかった。
卒業に必要な単位もほぼ取れており、
必修科目と卒論といった最低限の履修で
学校に行くことは少なくなっていた。
それでもゼミには必ず参加していて、
その日も卒論の調べ物をしたりゼミ仲間との集まりで帰りが遅くなってしまった。
駅に着こうとした時、反対側の道から 
幸太が歩いて来るのが見えた。

「幸太!お疲れ様」

「おう、遅いな?」

「ゼミの集まり。卒論仕上げていかなきゃ
 だからね」

「懐かしいな」

いつもと変わらない普通の会話だが
何だか幸太の様子がいつもと違う。

「何かあった?」

「何で?」

「何かいつもと様子が違う気がするん
 だけど?」

「華ちゃん凄いな」

それから幸太は七海さんの実家の経営が
あまり上手くいっていない事、
七海さんを助けたいと思ったけど、
自分では何をしたらいいか
分からない上に自分の仕事で
手が回らない事、援助してくれる人が
居るものの七海さんとの縁談を
望んでるという事を話始めた。

「幸太はどうしたいの?」

「七海の家を助けたい」

「じゃあ結婚は?」

「させたくない」

「わかった。私も考えてみて連絡するね」

話の内容もそうだが、思わぬとこから
連絡を取る様になる事に複雑だ。
“分かった、考えてみる”と言ったものの、これで何か助かる道が見つかった場合、
幸太は確実に七海さんと歩んで
行くだろう。だったら何もせず、七海さんが誰かと結婚してくれた方が 
私にとっては都合が良い。
かといって七海さんが他の人と結婚した
からといって幸太が私の事を
好きになってくれる保証はない。
だったら…
元々卒業と同時に絶ち切ろうとしていた
思いだ。この先、幸太との未来が
ないなら一生会わないでいようと
思っていた。どう転んでもこの結果が
変わらないのであれば、思いっきり
嫌われて幸太の方から切ってもらう。
私の中である計画が生まれた瞬間だった。