幸太の帰りが徐々に早くなりはじめた頃、“次の休みの時にでもどこか
出掛けようか?”と声を掛けられた。
こんなこと、幸太と出逢って初めてだった。 仕事が落ち着いた?心境の変化?
と思いつつ素直に喜んだ。

「デート!?」

「そうだな。何処か行きたいとこある?」

「こういうの初めてで、何処に行っていい
 かわからないの。みんな何処に行くの
 かな?」

「何処でも行きたい所でいいんだよ。
 学生時代に行って楽しかった所とか」

「そんなの行ったことないよ」

「友達とかと出掛けたりしなかったのか?
 学生時代、何してたんだ?」

「何って、勉強でしょ!?学生って勉強
 するものじゃないの!?」

学校では話をする子は居たものの、
休みの日に一緒に出掛けたり、
連絡をマメに取ったりする子は
居なかった。それに不満を
持ったことはない。そんな時間が
あるなら、幸太の側に居られるよう、
褒めて貰える様に勉強をする方が
良いと思っていた。幸太は大笑いして
いた。そんな面白い事言ったかな?
と思いながらもこんな顔は
久しぶりだなと幸太の笑顔を堪能した。
幸太は次から次へと場所の案を
出してくれたが、私が結局選べず、
“じぁあ、鉄板だけど遊園地いくか!”
と決めてくれた。
22歳にして2回目のデート。
ちなみに初デートは幸太と行った
“明日館”だ。
これがデートだと思っているのは
私だけだと思うが。自分で
浮かれているのが分かる…
スマホで遊園地、デート、服装を
調べまくった。迎えた当日は、
天気も良く最高のデート日和だった。
連れて来てもらった遊園地はまるで
別世界。可愛いキャラクターが
そこら中に溢れていて、建物も海外の様
だった。行き交う人々がお揃いの洋服を
着たり、帽子やカチューシャを
していたりし、みんな幸せそうに見えた。そんな雰囲気にも周りにも感化された。
“幸太、早く早くー、次はあっちに
行ってみよう”
“あれは何!?”
“わぁ食べ物まで可愛い”
全てが新鮮で興奮が収まらなかった。
幸太は“慌てなくても大丈夫だよ”と
そっと手を繋いでくれた。
私達も周りからみたら幸せそうに
見えるのかな?そうだといいな。
間違いなく私は今、幸せだ。